夏目漱石の「坊ちゃん」という本を読んだことがある。その中に、
「大きな門があって門の突き当りがお寺で、左右が妓楼(ぎろう)である。山門の中に遊郭があるなんて、前代未聞の現象だ」という一節がある。
遊郭は、道後温泉本館の裏から宝巌寺(ほうげんじ)に行く坂道付近にあったとのことです。
このあたりは、現在どうなっているのだろうか。
面影やそのような雰囲気はまだあるのだろうか。
1 遊郭って
遊郭というとアニメの「鬼滅の刃」に出てくる妖しい雰囲気の遊郭を思い出す。
遊郭とは、江戸時代に遊女を集めて客を接待する遊女屋が集まった公認の地域である。
確かに、「坊ちゃん」の一節にある、お寺と遊郭のセットは合わない。
お寺は厳格なものである。
厳格なものの中に遊郭のような遊びがあるということだ。
不思議であり、人によっては違和感もあるだろう。
2 道後温泉駅周辺
ゴールデンウィークに入り、まとまった休みが取れたので、かねてから行きたかった道後温泉に行くことにした。
飛行機で愛媛県の松山空港に降り立ち、レンタカーを借りて、予約していた松山市の宿泊ホテルに向かった。
15時過ぎに、ホテルにチェックインした後、道後温泉に行くことにした。
ホテルの前から路面電車に乗り、10分程すると、道後温泉駅に到着した。
駅前広場に行くと、「坊ちゃん列車」が展示されていた。
この列車は、夏目漱石の「坊ちゃん」の中で、主人公の坊ちゃんが「マッチ箱のような汽車」と言っていたので「坊ちゃん列車」と言われています。
「坊ちゃん列車」は、日中は松山市内を運行しているので、乗ることもできます。
3 道後温泉
「坊ちゃん列車」を見た後、駅前の商店街をぶらぶら歩きました。
商店街では、ここそこに、道後温泉のタオルを売っているのが目に付きました。
10分ほど歩き、商店街を抜けると、道後温泉本館に着きました。
道後温泉本館の前は人でごった返していました。
人の列に並び、チケットを買い、ようやく本館の中に入ることが出来ました。
本館の中には、霊の湯(たまのゆ)と神の湯(かみのゆ)の2つの温泉があります。
まずは6畳ほどの個室座敷に案内されました。
荷物を置き、浴衣に着替えました。
しばらくすると、女性のスタッフが、天目にのったお茶と坊ちゃん団子を持ってきた。
お茶も坊ちゃん団子この上なくうまかった。
お茶を飲んだ後、3階にある霊の湯に入ることにしました。
更衣室で浴衣を脱ぎ、お湯で体を洗い、湯舟に入り温まっていると不思議な感覚におそわれた。
というか、いつもの温泉とは違う何か違和感を感じる。
それは音がしない。まわりを見渡すと湯煙の中に3人程いる。
大きな湯釜からお湯がとうとうと出て落ちているが、その音がしないのだ。
普通はごぼごぼとお湯に当たる音がするはずだ。
家でやかんで洗い桶に水を流すとジャバジャバと音がするのだが、ある一定の角度で音が消える時があると思う。
まさにあの角度と速さでお湯が湯釜から落ちているのだ。
その無音の静寂の中で熱くも温くもない丁度よく調整された温度の温泉につかっていると何も考えられなくなる。
ヨガでいう境地のような心地である。
普通の温泉だといろいろなことをゆっくり考えてしまうのだが、ここは何も考えずにボーとして寝ているようだ。
夏目漱石もこの街は嫌いだが、温泉だけはよかったと言っていたがまさにこのことだ。
しばらくお湯につかり、さあ湯舟から出ようと思ったら出られない。
5分経っても出られない。気持ちよくて出られない。
これ程の気持ちよさを味わったのは人生で初めでした。
このままずっとこうしていたい。
天国、極楽とはこのような所ではないか。何も考えられない。まさに霊の湯だ。
霊の湯から出て、1階に降りて、神の湯に入った。
神の湯は広いが混んでいた。ここは子供も多く、家族や友人同士で来て話をしている人もいて賑やかだ。
逆に孤独を感じ、霊の湯でのいい気分にひたっていたかったので、早々に神の湯から出た。
4 夜の街へ
道後温泉の文字が書いてある赤いタオルを買い、本館を後にした。
本館のまわりを歩いてみた。
近くのおみやげ屋さんの前に、坊ちゃんに出てくる先生やマドンナのキャラクターが設置してあった。
観光客だろうか、みんな写真を撮っている。
5 遊郭へ
さて、道後温泉本館の裏手に行ってみた。
少し歩くと宝巌寺に続く坂道があった。
坂の両側には古い家々が立ち並び、廃墟のような家もある。
誰か住んでいるのだろうか。
その中の何件かは妓楼の面影を残しているような家もあった。
まわりを見ても私しか歩いていない。
そう思いながら坂を上ると寺の門に着いた。
何の変哲もない。普通のお寺だった。
この辺もかつては大勢の人が集まって賑わっていたのだろう。
時代の移り変わりを感じて少し寂しく感じた。
6 からくり時計
気分を変えたくなり、駅の方に歩いて行くとからくり時計があった。
1時間おきに音楽と共に人形が動き出す。
ここは大勢がからくり人形を見たい様子で集まっていた。
19時の時報が鳴り、からくり時計が動き出した。
まわりの人は息を飲んで、その様子を見ていた。
軽快な音楽と共に、20体ほどの坊ちゃんのキャラクター人形が出てくる。
見ていると楽しい気分になった。
気分も直り、帰路に着いた。
自宅に帰る日、「坊ちゃん団子」を2箱買った。
愛媛県に行くと「坊ちゃん団子」のおみやげがあるが、これは本当にうまい。
見た目もカラフルだし、かわいらしい。おみやげにはもってこいだ。
旅から自宅に帰り、坊ちゃん団子を食べていると、道後温泉の懐かしい思い出が一つ一つよみがえった。
7 振り返り
数年前の話ですがその時は入浴料を払うと神の湯に入れますが、600円足すと霊の湯にも入れるようになり、更に3Fの個室座敷も利用できました。
600円足して個室座敷が利用できるなら払うでしょっと、合計1000円位だったと思います。最近ネットで調べたら1500円になっていました。
改修工事をしている時もあるので、訪れる際には事前に確認した方がいいと思います。
他に道後温泉の外湯として椿の湯と飛鳥乃温泉(あすかのゆ)があります。
私は椿の湯に松山市滞在2日目に行きました。
ここは庶民的な温泉で神の湯に似ていますが、観光客というよりは近所の人が利用しているようでした。
7 アクセス
アクセスはいろいろありますが、地方や東京方面からは愛媛県の松山空港まで飛行機で行きます。松山空港からバスに乗って所要時間30分位の所にあります。
私は空港でレンタカーを借りて道後温泉近くの宿泊予定のホテルまで行きました。そのホテルの前に伊予鉄道の駅があり、そこから路面電車に10分程揺られて道後温泉駅まで行きました。
道後温泉駅から道後温泉本館までは徒歩で3分位です。
道後温泉に匹敵する「忘帰洞」を書いた記事「熊野古道と洞窟温泉」もお楽しみください。
それではいい旅を! Have a good trip!
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